サディスティックマイヤー

サディスティックマイヤー。それは、リサ・ステッグマイヤー全盛期に私が面白いと思って名乗っていたペンネームである。

あめ色玉ねぎとはなんぞや。

カレー作りを難しくしているものの一つに、
「あめ色玉ねぎ」という謎の表現があると思います。

 

 

あめ色…

 

 

生まれてこれまで、色鉛筆や絵の具にも一度も登場してこなかった新色が
突然レシピ本に現れる衝撃。戸惑い。
そして誰もが、当然知ってますよ的な顔するもんだから
「あめ色って何色…?」
なんて恥ずかしくて聞けないまま大人になってしまった。

 

そんなあなたに贈る今回のブログです。

 

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「あめ色」という言葉を調べますと、こういう記述がありました。

 

「あめ色とは、水あめに由来する、深みのある強い橙色のことです。
 現在の水あめは無色透明のものが一般的ですが、
 古くからの水あめは麦を原料とした麦芽水あめで、
 透明感のある琥珀色をしています。」

 

つまり、透き通った感じの黄色?茶色?みたいな色みたいです。

 

「古くは、あめと言えば水あめを指しました。」という記述もありましたが、
現代において、あめといえばキャンディーですし、
それほど馴染みのない水あめも無色透明が一般的です。
本来の「あめ色」をしたあめを見たことがある人は少ないんじゃないでしょうか。
ギリ昭和生まれの僕ですらそうですから、
若い平成ジャンプ達は全くイメージできなくても無理もないでしょう。

 

そもそもこの「あめ色」という表現は、現代ではほぼ玉ねぎの話題でしか登場しません。
ほとんどの人が「あめ色」と言われたら炒めた玉ねぎの色を想像するでしょう。
つまり現代では、「あめ色」とは「炒めた玉ねぎの色」なのです。

 

もし、茹でたエビの色を「赤エビ色」と表現するとして、
レシピに「赤エビ色になるまでエビを茹でます。」と書いてあったら
そんな理不尽なことありますか。それもはや色の説明いりますか。
しかし玉ねぎにおいては、この理不尽な状態がまかり通っている訳でございます。

 

これはどげんかせんといかん、という訳で今回は
この「あめ色玉ねぎ」という料理界7不思議のうちの一つの謎を
徹底的に解き明かしたいと思います。

 

 

 

普通の料理本なら、ここから実際に炒めた玉ねぎの写真を載せて終わりですが、
このブログはもちろんもっとめんどくさいです。

当然、そもそもなぜ玉ねぎはあめ色になるのか」という話からいきます。

付いてきてください。

 

 

(手っ取り早く色が知りたいんじゃという方は後半まで読み進めてください。
 安心してください。あなたの方が普通です。)

 

 

玉ねぎを炒めていくと、
まず白いまま少しずつ透明に透き通っていきます。
その後、徐々に黄色から茶色に変わりどんどん色が濃くなります。

 

味の変化としては、生の状態では辛味のあったものが、
徐々に甘味が増していき、色づくにつれ香ばしい香りを感じるようになります。

 

この過程での玉ねぎの変化として、
①甘味が出る変化
②茶色く色づく変化
という大きく二つの変化に分けられますが、これらはそれぞれ独立した反応なのです。

それぞれについて説明します。

 

 

まず①甘味が出る変化について、

 

これは、以前は「加熱によって辛味成分が甘味成分に変わる。」という説が一般的だったようですが、
現在では「生の時は辛味成分と甘味成分どちらも含まれており、加熱すると辛味成分が揮発することで甘味を強く感じるようになる。」という説が一般的なようです。

 

ということは、甘味成分の量が変わるわけではないので、
辛味成分が完全になくなった状態が甘味のピークということになります。
個人的には、
玉ねぎを炒めて、色が透き通ってきて少し色づいたぐらいの状態のとき、
味見するとすでに辛味はほとんど感じません。
つまりこのあたりが甘味のピークで、これ以上炒めても甘くはならないと僕は思っています。
(炒め続けると水分が減るので、その分甘味を強く感じることはあります。)

 

 

 

そして②茶色く色づく変化について、

 

これはいくつか複雑な変化が起こっていますが、
主に「メイラード反応」という、糖とアミノ酸による反応が起こっているようです。
これは、肉を焼いたときに表面が茶色くなるのと同じ反応で、
色が茶色くなるとともに、香ばしい香りを感じるようになります。

 

いわゆる「焦げ」と混同されがちですが、基本的には全く別の反応で、

メイラード反応によって苦みを感じることはありません。
(実際に肉を焼くときなどは、メイラード反応と同時に、部分的に焦げも起こっている可能性はあります。)

 

 

つまり、この2つの反応の重要なことをまとめますと、

玉ねぎを炒めると、

「甘くなる」と「香ばしくなる」という二つの独立した反応が起こる。
炒めていくと、ある時甘さはピークを迎え、
そのあとは甘さはそのまま、香ばしさだけが増していく。
そして、「焦げる」とは全く別の反応であり、
あめ色玉ねぎを作る過程で焦がす必要はない。

 

つまり、
茶色いほど甘くなるわけではないし、
あの色は焦げてる訳じゃないですよー

 

 

という感じです。

この一言の為に長々と説明しました。

途中わかりにくい所もあったとは思いますが、心配いりません。

ここまでの知識がなくてもあめ色玉ねぎの制作になんの支障もありません。

 

 

 

そしていよいよ、その「あめ色玉ねぎ」をどうやって作るかという話です。

読み飛ばした人はそろそろ戻ってきてください。

 

 

「あめ色玉ねぎ」でネット検索すると、いろんな作り方が出てきます。
ただ、基本は、

「焦がさないように炒める」ことが大事です。

 

強火で15分ぐらいで茶色くするレシピもありますが、
そういうレシピだと、おそらく少し焦げてるんですよね。
一部が焦げてるんだけど、混ぜ合わせるとそれらしい色になる、という罠でして、

色はあめ色なんですが、焦げてないものと食べ比べると、やはり多少苦みがあります。

ただ、その焦げが香ばしさも演出してますので、

多少の苦み以外は結構近い味になっているのも事実です。
時間がないときは十分代用できる方法かもしれません。

 

僕も昔は、多少焦がさないと茶色くならないと思っていたんですが、
それは間違いで、時間をかけると焦がさなくてもかなり茶色くなります。

 

先にレンジで加熱する方法や玉ねぎを冷凍しておく方法なんかもありますね。
実際に試したことがあまりないんですが、
原理的には多少は炒める時間が短くなるんじゃないかな、と思います。
どんな方法でも、味をみて、美味しかったら問題ないと思います。

 

 

今回、実際にあめ色玉ねぎを作ってみました。

そのときの写真を用意したので、ご覧ください。

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写真で見ると想像以上に色の変化がわかりづらくて

わりと反省しているところでございます。


今回は玉ねぎ2.5個分を炒めております。
切り方は荒みじん切りですが、どんな切り方でも特に問題ありません。
ただ細かく切った方が炒める時間は短くできます。

 

味的には40~50分の時点で十分でして、

おそらくこのあたりがいわゆる「あめ色」なんだと思います。

ただ今回はキリがいいように、長めに1時間炒めてみました。
そして1時間炒めたものがこちらです。

 

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かなり茶色いですが、焦げている訳ではありません。
焦げなくても時間をかければここまで茶色くなります。
そして焦げてないので苦みは全くありません。
苦くはないのですが、ここまで茶色くなるとかなり強く香りが出ます。

 

このぐらい炒めると、

欧風カレーや日本風カレーだとコクが出て美味しくなりますが、
逆に、アッサリしたカレーやエスニックなカレーにはあまり合わないと思います。
茶色くなればなるほどいいという訳ではないので、
作るカレーに合わせて、味を見ながら調節するといいと思います。

 

 

焦がさない為には、かなり油を多めに使うと失敗が少ないです。
インドの現地のレシピだとそもそも日本の感覚よりかなり油を使います。
ただ、油が多いと気になる人も多いと思います。

そういう方は玉ねぎを炒めた時点で余分な油を切るか、
少ない油で炒める場合は、水分が飛んできたら水を足してあげると焦げにくいです。

 

火は、今回は終始弱火で炒めてます。
30分以降はギリギリ消えないぐらいの超弱火です。
付きっきりで混ぜれば、もっと強火で短時間ですることも可能ですが、
弱火だとほとんど放置していても大丈夫なので、結果的にその方が楽だったりします。

 

弱火で玉ねぎを炒めてる間に他のことを全部片づけるつもりでやると

ちょうどいい時間であめ色になるのでそこまで大変な作業でもないと思います。

 

毎回ここまで炒める必要もないかもしれませんが
これだけでかなり味が変わったりもするので
気合入ったカレー作る時なんか、

一度チャレンジしてみてはいかがでしょうかー(いかがでしょうかー)←コンビニのあれ

 

 

 

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