サディスティックマイヤー

サディスティックマイヤー。それは、リサ・ステッグマイヤー全盛期に私が面白いと思って名乗っていたペンネームである。

スパイスの宇宙

僕は、なかなかのカレー好きである。

 

なかなかのカレー好き、という、ハッキリしない曖昧な表現にしたのは、

この世には「本物の」カレー好きがたくさんいるからである。

カレーを食べない日などない、なかには年間500食以上なんて猛者もいる。

僕は、そこまでは至っていない自覚がある。だから「なかなかの」カレー好き。

 

世の中には、中毒的なマニアを生む食べ物がいろいろと存在するが、カレーも間違いなくその一つだと思う。

じゃあ、カレーの魅力とはなんなのか。

 

僕はなかなかのカレー好きなので、例えば3食連続カレーなんてよくある。

ひどいときは一週間ほぼカレーしか食べてない、なんてこともある。

そういう話をすると友人には、「よく飽きないね」と言われてしまう。

こう言われると僕はこう思う。

みんな「カレー」というものを誤解しているんじゃないか。

 

みなさんは「カレー」って、ある料理の名前だと思ってませんか。

「カツ丼」とか「餃子」とか「寿司」みたいな。

僕は、違うと思っています。

 

よく、「インドにカレーという料理は存在しない」と言われます。

これは逆に、「インドの料理はすべてがカレー」とも言いかえられます。

 

「カレー」という言葉をWikipediaで調べるとこう書いてあります。

”インド料理の特徴的な調理法を用いた料理に対し、欧米人が名付けた呼称。”

つまり、インドっぽい味付けがしてある料理は基本的にすべてカレーなんです。

 

だから「カレー」という言葉は、料理名というより料理ジャンルの名前ではないか。

「中華」、「フレンチ」、「イタリアン」、そして「カレー」。

 

僕も、例えば毎食ココイチを食べたらやっぱり飽きます。

ただ、カレーというジャンルの中でも違う料理を選んで食べれば飽きることはありません。

同じように、多くのカレーマニア達はそうやってカレーライフを充実させているのです。

 

 

 

 

 

 

世界には様々な国に様々なカレーがありますが、

インドだけみても多種多様のカレーがあります。

 

インドは非常に広い国です。

北の方にはヒマラヤ山脈があり、富士山よりはるかに高い標高に人々が暮らしています。

冬季は雪で封鎖されてしまうような地域も少なくありません。

一方、南の方は赤道のすぐそば。一年中Tシャツ一枚で過ごせます。

それだけ気候が違うので、当然食べるものも変わってきます。

 

日本で、本格的なインド料理屋といえば、一般的に

ドロッとした濃厚なカレーにナンをつけて食べるようなものをイメージすると思います。

あれは北インドのカレーです。

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↑日本でよく見る北インドのカレー

 

北インドでは小麦が主食なのでナンなどのパンをよく食べます。(米も食べますが)

また、それに合わせるカレーも乳製品や油をふんだんに使った濃厚なものが多いです。

日本だけでなく、インド国外のインド料理店はほとんどが北インドのカレーを提供しているようです。

ここまで インド料理=北インド料理 というイメージになったのは色々な理由があると思いますが、

やはり濃厚でクリーミーな料理が世界で馴染みやすかったことや、

欧米や日本のいわゆる「カレーライス」にイメージが近かったことなどがあるのではないかと思います。

 

 

 

そうなると気になる南のカレー。南インドではどういったものを食べているのか。

南インドでは主食として主に米を食べます。

日本米のような粘りはなく、パラパラのご飯です。

そしてそれに合わせるカレーは、濃厚な北のものとは対照的に非常にアッサリしています。

さらさらのスープ状のものや、豆を煮崩したものなどです。

また、南はベジタリアンが多いので、野菜を使った料理が豊富です。

味こそ、スパイスを使ったエスニックなものですが、かなり和食のイメージに近いと思います。

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↑南インドのカレー。伝統的なものはバナナの葉に乗せて供される。

 

最近はヘルシーなものやオーガニックな料理が注目されてきたこともあり、

日本でも南インドの料理を出す店が増えてきました。

ただ、北インドの濃厚なカレーのイメージがまだまだ強いので、

南インドのアッサリしたカレーが物足りなく感じる方も多く、まだ一般的ではないと思います。

しかし個人的には、先ほど和食に似ていると言ったように

南インドのカレーの方が日本人には合っているような気がするのです。

 

 

 

僕としては、北と南、どちらも大好きなカレーです。

そして、インド以外の国にももちろん様々なカレーが存在します。

その世界様々なカレー達すべてに対して、美味しいと感じる人が増えていったらとても素敵だと思う訳でございます。

 

 

 

 

 

カレーには何種類ものスパイスが使われます。

そしてそのほとんどが、細かく砕かれカレーの中に存在している訳です。

もし、僕がミクロサイズになってカレーに飛び込んだら、

そこには無数のスパイスのかけら達が、星のように光っているのではないか。

 

カレーを食べるとき、

僕はいつも、そのスパイスの宇宙に思いを馳せるのである。